DV的育児

今日のタイトル、ドキッとしますよね。

DVといえば、一言で言うと『ドメスティックバイオレンス』つまり『家庭内暴力』ですよね。

これを読んでいる人の中では、自分には無関係だと思う人がほとんどかと思いますが、実際のところ、親子でDVの心理サイクルに陥っている家庭を目にすることがちょくちょくあるので今回ここに書いてみることにしました。


DVで思い浮かべるのは、まず身体的暴力だと思います。親から子供に対しての暴力で子供が命を落としたり重篤な症状に陥る悲しいニュースは今も後を立たないどころか、コロナをきっかけに増加しています。

同じく、夫婦間、パートナー間でのDVで傷つく人も過去四年間増加し続けています。

そして、年齢別で見ると一番DV加害者、被害者共に人数が多いのが30代、40代の現役個お育て世代です。

令和2年の数字を見て見ると、総相談件数は警視庁から報告されている分だけで8,627件。実際はこの何倍もの事例が日本全国で起きていると言えます。

その根拠は、内閣府が発表しているアンケートの結果です。

"内閣府男女共同参画局が全国5000人を対象に実施した調査によると、婚姻経験のある人(2485人)のうち、25%以上の人が「身体的暴行」「心理的攻撃」「経済的圧迫」「性的強要」のいずれかの行為を配偶者から受けたことがあると回答。そのうち「何度もあった」と答えた人は9.7%だった。

なんらかの被害を受けたことがあった人(650人)に、「だれかに打ち明けたり、相談したか」を聞いたところ、「相談しなかった」が半数近い48.9%で、「警察に連絡・相談した」はわずか2.2%だった。"

これは2018年のデータですが、警察に相談する人が極小数であるという事実は今も大きく変わりはないはずです。

警察などに相談する人の方が圧倒的に少ない理由は複数ありますが、その中に、当事者たちがDVのサイクルに入っていて抜けられないということが挙げられます。

DVの心理的サイクルを図で説明します。

主に3つの時期があり、(4つに分けられている場合もあります)

・緊張期・爆発期・ハネムーン期

があります。

加害者側も被害者側もこのパターンにはまり、なかなか抜けることができないのがDVなのです。

そして、これが親子関係の場合、子供は圧倒的な弱者なので、ここまで程度が酷くない場合でも子供の心には大きな混乱が起きることは容易に想像できます。

具体的な例を出して考えてみましょう。

小学生の息子がいるお母さん。幼稚園の頃から、「大好きだよ」という言葉は伝えてきたつもりでした。でも、小学校に上がってからは、成績の方が気になり始め、ついつい小言が増えてきて、中学年あたりからは子供もお母さんの小言に反抗し始めました。

お母さんは、自分は子供のためを思って言ってるのに・・・と腹立たしさが収まりません。

お母さんの怒りは段々エスカレートし、息子への口調も強くなる一方です。そして、「勉強しなさい」の小言から、「勉強しないと●●させないよ!」と言う脅しが入ったり、汚い言葉で罵ったり、人格否定のような言葉を投げかけるようにまでなり、息子との関係が険悪なものになってしまいました。

しばらくして我に返ったお母さんは、息子に謝ります。「あの時はあんなこと言ってごめんね。もう絶対あんな言い方しないからね。今日は◯◯くんが好きなアイスを買ってきたよ。」と、息子に対しての態度を180度変えて優しくします。

ついでに「◯◯君はありのままでいいからね。お母さん、◯◯君が大好きだからね。」と再び愛情表現の言葉も付け加えます。

しかしまたしばらくするとどうでしょう・・・・。息子の出来ないところが目についてきて、最初と同じように小言が少しずつ増えていくのです。


お母さんは、間違いに気づいたらすぐに謝って愛していると伝えているから大丈夫、と思うかもしれませんが(本当にこう思っている人は実は結構いるようです)、私は、このようなサイクルは子供の心を非常に混乱させているのではないかと考えています。

そして、それは、身体的不調やメンタルの不調として現れ、親自身は自分が原因だと感じていないこともしばしばあるように思います。


そもそも、日本は親子のプライバシーにとても配慮されている、いや、配慮されすぎている国です。

今でこそ、親が子供に身体的暴力を加えたら警察を呼ぶケースも増えてきましたが、ちょっと前までは、「しつけ」として容認されている場合が多くありました。

「他人の家庭のことには口出しすべきではない」と言う暗黙の了解のもと、家庭内がどんどん閉鎖的空間になってきたのだと思います。

そして、そのような社会の中、子供たちは閉鎖された空間、しかも親という圧倒的に強い立場の相手から逃げることもできずに苦しんでいるケースは、減るどころか、増えているようにも感じます。

その裏付けとなるのが、厚労省が発表している『福祉行政報告例』のデータです。親からの身体的な暴力が減少している一方で、親からの心理的虐待は増加の一途を辿っています。

「小さい時はあんなに可愛くて言うことを聞いたのに、なんで!?」という思いから、年齢ごとに適した接し方が分からない親たちが、自身もまた社会的プレッシャーに押しつぶされそうになりながらそのストレスの吐口を子供に設定してしまっているのではないでしょうか。

そして、虐待、とまではいかなくても、子供の自由思考を奪う表現として以下のようなものがありますね。

「どっちを選んでもいいよ!」と言いながらも、子供が選んだ方に「なんでそっちなの?こっちの方がいいんじゃない!?」などと言ったり、

「そんなの選んだって将来何の役にも立たないよ!」と言ってみたり・・・。

子供からしたら、「じゃあ最初から私の意見なんて聞かなきゃいいのに・・・。」となりますよね。非常に理不尽です。


親が自分の人生を楽しむこと、これが子供の幸せにつながると言うのは真理だと思います。

それが出来ていない状態、つまり子供に依存している状態が、このDVサイクルに陥りやすい状態ではないでしょうか。

このサイクルに入っていると気づいていない場合がほとんどですが、もしかして自分もこれやってしまっているのかな?と感じたり、子供との関係が本当に険悪なものだと感じている場合は、今一度客観的に現状把握をし、もしこのように子供を傷つけたり混乱させたりしていると感じたら、強い覚悟を持って、このサイクルから抜け出す方法を、親自身が見つけてください。

日本ではビジネスの場以外であまりメジャーではありませんが、メンター(自分のことを客観的に見て助言や精神的サポートをしてくれる人)を見つけるなどして、自分自身を加害者サイクルから引き離してあげてください。


子育てに正解はないが、やってはいけないことはあります。それを精神論で「自分も頑張ってるし」で終わらせてはいけないこともあると思います。

子供への精神的DVが、少しずつでも減っていきますように。可能性を秘めたたくさんの子どもたちが、どうか、その芽を摘み取られることなく、自ら幸せを掴み取る人間へと成長していくことができますように。




Vision English

英語を学びながら、海外の子育て法についても学んでみませんか? 典型的な日本の家庭で育ち、圧に耐えられず米国の大学に編入し、卒業後は海外の様々なメディア通訳、コンサル業を経て今は3人育児中です。 海外生活での経験や、コーチングスキルを交えながら、ママが自分自身と向き合い、結果的に腑に落ちる状態に辿り着けるようサポートします。

0コメント

  • 1000 / 1000